半日程で風を治す、そのためには条件があります。1)汗腺(エックリン腺)がある真皮(いわゆる表に含まれる)に活性を無くした邪気(死んだ病原体など)が集まっている。2)主に尿、一部は汗と共に、邪気を体外へ排泄出来る。今回は、1)についてのべてみます。
条文1に、太陽の病たる、脈浮、頭項強痛して悪寒す。とあります。通常、邪気(ウイルスなどの病原体)は、鼻から入り、その奥にある睛明から体内へ侵入します。頭項強痛から、侵入した邪気は、太陽膀胱経を通過していることが分かります。太陽膀胱経は、頭部、頚部、背部へと流れていきます。従って、邪気は、臓腑(いわゆる裏)へ侵入しなければ、頭部を通り背部へ移動し、広がっていき真皮に到達します。そのことは、脈浮と悪寒によって知ることが出来ます。
脈浮について考えてみましょう。太陰肺経の原穴、脈会穴でもある太淵穴(橈骨動脈の近くにある)から解放された気が、決定的な影響を与えます。
肺兪|<- - - -肺 - - - - - - - - ->太淵
|↑ 主に肺経脈
↓
大腸兪|<- - 大腸
詳細は省きますが、胆経脈から脾経脈へと流れ込んだ気は、期門を経由して胃へ流れて行きます。その結果、胃の傍らにある肺経脈に流れ込む気が増加します。また、肺兪と大腸兪が邪気の影響で塞がれれば、肺から兪穴へ抜ける気は抑制されます。従って、肺経脈を通って太淵へ向かう気は増強され、橈骨動脈周囲組織抵抗が下がり、脈は浮くのです。つまり、脈浮とは、肺経脈を通り肺へ流れ込む気が、増加していることを暗示しているのです。
悪寒とは、条文11などを考察すると、次のような時に感じるのでしょう。表の(陽ー陰)>裏の(陽ー陰)の状態の時です。邪気が表に集まれば、陽気も表に集まり、表(陽ー陰)>裏(陽ー陰)となり、悪寒を感じます。つまり、邪気が表に集まれば、人は悪寒を感じるのです。
条文11 病人身大熱するに反て衣を得んと欲する者は、熱皮膚に在りて寒骨髄に在るなり。身大熱するに反て衣を近づくるを欲せざる者は、寒皮膚に在りて熱骨髄に在るなり。