ヘモグロビンA1cが、13%から15%の間を動いていた、40代の男性の糖尿病患者さんがおられました。10数年間、自覚症状も明らかな合併症も認められませんでした。数年前、一大決心されたようで、独自に判断され食事療法と運動療法を始められていました。以前から使われていたインスリンなどの薬物療法は、そのままでした。それでも、ヘモグロビンA1cは低下していき、3ヶ月で8%台まで改善していました。しかし、直ぐに糖尿病性合併症(眼底出血、神経障害など)が現われてきました。実は、長い間高血糖であった患者さんの血糖を急激に下げると、眼底出血などの合併症が現れるのは、そう珍しいことではないのです。
一般には、“合併症を防ぐために血糖を下げましょう。”と言われています。では、なぜ血糖コントロールが著しく改善したのに、合併症が現れたのでしょうか?極めて高い血糖値が続いていても、なぜ自覚症状も合併症も現れなかったのでしょうか?