条文208に、陽明病、脈遅にして汗出ずると雖も悪寒せざる者は其の身必ず重く、短気し、腹満して喘す。潮熱有る者は此外解せんと欲す、裏を攻むべきなり。手足濈然として汗出ずる者は此大便巳に鞕きなり、大承気湯之を主る。若し汗多く、微かに発熱悪寒する者は外未だに解せざるなり。其の熱潮ならざれば、未だ承気湯を与うべからず。若し腹大いに満し通ぜざる者は小承気湯を与うべし。微かに胃気を和し大泄下に至らしむる勿れ。とあります。分析してみます。
陽明病で汗が出る場合、通常は脈は遅にはなりません。血管外の水成分が多くなり、心へ戻る血液量が減少している可能性が高いでしょう。悪寒しないなら、表には陽気が集まっているので、水気もあるはずです。其の身必ず重く、短気し、腹満して喘す、は中焦で邪気が生まれ、肝を通り肺に達し、表に運ばれたことを示唆しています。
表(主に皮膚)汗が出る
↗ ↖ 水気(+)身必ず重く
胃絡脈↑↑胃経別 ↑
胃:気の鬱滞(熱) ↑
↓ 腹満す ↑
脾-->肝----->心⇄肺 水気(+)
短期して喘す
潮熱が出れば、鬱した気が解放されるので、邪気が胃に向かって移動することになります。従って、裏を攻むべきなりとなります。
胃に気が鬱滞すると、大腸経を流れる気は、商陽→天鼎→大腸へと流れて行きます。そして、大腸に燥糞が出来ると、大腸で気が鬱滞します。行き場を失った気(熱)は手足へと流れ、手足濈然として汗出ずるとなります。著者は、大承気湯が主治すると言っています。
神庭
迎春-->(睛明)-->承泣 ↑
↑ ↓ ↑
天鼎 ↓→ → → →:手陽明大腸経
↓↖ 心 欠盆 →:足陽明胃経
肺 ↖ ↙↑ ↓↘ →:足太陰脾経
↓ 商陽 少衝 ↖←胃 ↓ →:手少陰心経
↓ ↓
大腸 ↓
厲兌
気の流れ (心包->中衝)
商陽→天鼎→迎春-->承泣-->欠盆->心--->少衝:手
↘ ------>厲兌:足
汗が多く出、表の邪気が排泄されなかったら、微かに発熱悪寒するとなるでしょう。もしその熱が潮熱でないなら、一部の邪気は未だに胃に侵入していない可能性が高いでしょう。だから、未だ承気湯を与うべからずとなります。
若し腹大いに満し通ぜざるなら、きは、商陽→天鼎→迎春--->胃へと流れ、鬱滞していることになります。おそらく一部の大腸の気は、商陽→天鼎→大腸へと流れているはずです。ですから、小承気湯で胃気を和せと言っています。それでは、大、小承気湯とはいかなる方剤でしょうか?次回、詳細に分析します。