調胃承気湯については、便秘の項でお話ししましたが、再考してみます。
金匱要略、条文17-17に、食已わり即ち吐すは、大黄甘草湯之を主る。とあります。食事が終わった時、消化液の分泌によって胃壁の陰液が減少し、嘔吐が起こったのです。これを補うためには、血液量を増やす必要があります。おそらく、大黄は、胃壁血管の血流を増やす力(活血化瘀)があると考えます。甘草の働きについては、少し長くなるので今回は述べません。
最後の生薬、芒硝について考えてみます。傷寒論、条文248に、太陽病三日、汗を発すれど解さず、蒸蒸として発熱する者は胃に属すなり。調胃承気湯之を主る。とあります。
発汗後の邪気の働き 表(皮膚)発熱する
↑気の鬱滞による熱
--->--->--->||| ||胃 邪気は筋層には達していない
膀胱経 胆経 脾経
発熱は、胃熱を皮膚から捨てようとしているためだと言っています。芒硝の主成分は合水硫酸ナトリウムなので、おそらく邪気を分泌物(塩酸など)と共に胃内へ排泄する力があると考えます。
条文123に、太陽病、経を過ぐること十日余日、心下温温として吐せんと欲して胸中痛み、大便反て溏、腹微かに満して鬱鬱微煩す。此時に先だち自ら吐下を極むる者は調胃承気湯を与う。---。この条文から、調胃承気湯は、本来、瀉下剤として作られた方剤ではないことが分かります。胃の漿幕とその周辺にある熱を清するために作られた方剤です。次回は、麻杏甘石湯について考えてみます。