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漢方薬と西洋病名 2013,8.3

 以前大学の研究室で、糖尿病性神経障害の研究をしていた時のことが頭をよぎることがあります。当時、ARIといわれる糖尿病性神経障害の新薬が開発されていました。時を同じくして、ある国立大学から漢方薬の牛車腎気丸にARIの働きがあるという報告がなされました。効能にも、しびれや老人のかすみ目などがうたわれていました。有効な薬がなかったこともあり、私も多くの患者さんにこの漢方薬を使いました。その結果は、さんざんなものでした。そう、ほとんど効かなかったのです。
 漢方薬が悪いのではなく、使った医師に問題があったのです。当時の私は、牛車腎気丸(漢方薬)について無知だったのです。牛車腎気丸は、糖尿病性神経障害を治すために作られた方剤ではないのです。腎陽虚の治療薬八味地黄丸に車前子と牛膝を加えた方剤が牛車腎気丸です。腎陽虚で、体内の水の流れが不調を来した場合に使う漢方薬と考えられます。糖尿病性神経障害に効かなくても、不思議ではないのです。漢方の雑誌を見ていると、西洋病名に対して漢方薬が当てはめられています。効いてくれたら良いのですが、効かなかった場合には途方に暮れてしまいます。西洋病名の対となる漢方薬はないのです。
 原著には、「腎虚し、腰重く脚重く、小便利せざるを治す。」とあります。
at 2013/08/03 15:14:42