10年以上も前の話ですが、毎日100単位以上のインスリンを注射していた患者さんが入院されました。血糖値は500 mg/dlを超えていました。私が最初にやったことは、インスリンを減らして行くことでした。理由は簡単です。100単位以上のインスリン注射が必要な患者さんは、特別な場合を除けばいない。それと、重大な低血糖を防ぐために食べ続けなければならないので、減らしてやれば恐怖から解法してあげられる。血糖は、みるみる下がり、いっさいの薬物なしで退院されて行きました。
大学にいる時、驚くような論文を見ました。毎日、1000単位以上のインスリンを注射しないと、血糖が下がらない患者さんの症例報告でした。この患者さんの皮下には、なんとインスリンを分解する酵素があったのです。しかし、このような方は、極めてまれです。
インスリンには幾つかの働きがありますが、問題になるのは栄養を強引に体脂肪に変える働きです。この働きが、いろいろな問題を引き起こします。太ってくる、効果がなくなってくる、低血糖が起きる、----。